“スポーツ歯学” |
顎口腔領域におけるスポーツ外傷は、軟組織の損傷、歯の破折、顎骨骨折、さらには脳震盪などにまで及ぶこともあり、これらの現症もさることながら、その損傷あるいは後遺症が与える肉体的、精神的な影響は、社会的生活を営む上で極めて重大です。このようなスポーツ外傷より顎口腔系を保護する装置としてマウスガードがあります。 しかし、コンタクトスポーツ選手の中には、咬合関係を含め適合性の悪いマウスガードの使用により、顎偏位などをきたし、顎頭蓋機能障害(TMD)症状が現れたりし、様々な問題が生じています。 当然、このような状況下では選手自身が持っている能力を十分に発揮することはできません。 マウスガードの必要性とその効果を含め、装置による顎口腔系の状態変化がスポーツパフォーマンスに影響を及ぼす可能性を探る必要があります。 この新しい学問としてのスポーツ歯学をより体系化し、広くスポーツ界にフィードバックする必要があるものと考えられますが、スポーツ歯学の歴史は浅く、まだ顎口腔系を包括した学問体系には至っておりません。しかし、近年豊かな社会生活を求める現代人のスポーツ活動への関心は高く、今後スポーツ歯学という新しい分野は、社会の二一ズに対応できるよう飛躍的に発展して行くものと思われます。 さらに、21世紀に入り、国内外のスポーツ歯学の動向を伺うと、まさに、新しい歯科医学の分野として、注目され始めているは事実です。 このスポーツ歯学、あくまでもフィールドワークが主役の実践的歯科医学でなければなりません。 (スポーツ歯科学公開講座の石上恵一東京歯科大学教授講演より引用) |
マウスガードとは?(=マウスピース、マウスプロテクター) |
マウスガードとはスポーツ時に口や顎(アゴ)のケガを防ぐため、主に上アゴにつけるものです。 弾力性のある材料でできていて、歯をすっぽり覆うような形をしています。 試合中、練習中の歯が折れる、抜け落ちる、唇・舌・頬の粘膜などの切り傷、アゴの骨折....といったケガの防止、軽減にマウスガードが役立ちます。 カスタムメードのマウスガード→ |
マウスガードを使用するスポーツ |
マウスガード装着が推奨されるスポーツ(スポーツ歯学の臨床/医学情報社より改変) 格闘技系スポーツ ボクシング、キックボクシング、空手、レスリング、柔道、日本拳法など 球技、団体競技系 アメリカンフットボール、ラグビー、アイスホッケー、バスケットボール、ラクロス、フィールドホッケー、サッカー、ハンドボール、野球、バレーボール、ラケットボール、テニス、スカッシユ、水球、など 個人技系スポーツ 体操、トランポリン、アクロバット、重量挙げ、スキー、スケートボード、スカイダイビング、ハングライダー、馬術・乗馬、モトクロス、サイクリング、円盤投げ、砲丸投げ、サーフィン、スノーボード マウスガード装着が義務づけられているスポーツ 公式規則に規定されており、マウスガードをつけていないと試合に出られないスポーツがあります。 ボクシング、キックボクシング、K−1、空手の一部、アメリカンフットボール、ラグビーの一部、ラクロス(女子のみ)、インラインホッケー(20歳以下) |
マウスガードの効果 |
口や顎(あご)のケガの予防効果が高いことが報告されています。 (例:北米の2470名のアメリカンフットボール選手に対する調査から 1989年McNuttら) 他には… 顎関節の保護 マウスガードを歯と歯の間に介在することで顎関節への衝撃が緩和されるといわれています。 脳震盪の防止、軽減 格闘技やアメリカンフットボール、ラグビーなど衝撃の大きいスポーツで脳震盪の防止、軽減にも効果があるとされています。 心理的効果 以上の効果により、安心してプレーができる、積極的なプレーができるという心理的効果も大きいようです。 運動能カの向上 一部の人は、マウスガードの装着により筋力がアップする、平衡感覚がアップするなどといわれていますが、運動能力の向上については、明確には科学的な証明はされていないのが現状です。 (これから、スポーツ歯学として研究が進んでいくことと思います) |
2.マウスガードとスポーツへ |