歯科用の充填材の
環境ホルモン溶出記事について

◎歯科用材料と環境ホルモン(02/01)
歯科治療で使うモノから
環境ホルモンが検出されたと報道されましたが、
まったく、心配ありません! 
歯科治療用の充填材 環境ホルモン溶出の新聞記事
2001.12.15新聞報道
●歯科治療用の充填材 環境ホルモン溶出
 仕上がりが白く、美しく見える歯科用充填材料として虫歯治療などで広く用いられているコンポジットレジンから、生物のホルモンの働きを乱す内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)作用のある物質が溶け出すことを、大阪大歯学部の恵比須繁之教授、樽味寿助手らのグループが突き止めた。

 女性ホルモンに似た作用を持つと指摘されている物質が、レジンの変色を防ぐために加えられていることが原因らしい。
 研究グループは厚生労働省などに、レジンへのこれらの物質の使用実態を明らかにするよう求めている。
 14日から茨城県つくば市で開かれている環境ホルモン学会で発表する。

 グループは、治療に使われる量に近い市販コンポジットレジン11種類を溶液に24時間浸し、レジンから溶出した物質のホルモン作用を培養細胞を使って分析。6種のレジンからの溶出物に女性ホルモン作用があることを確認した。

 レジンの変色を防ぐために加えられた紫外線吸収剤のベンゾフェノンの一種や、レジンの重合を進めるためのアセトフェノンの仲間がホルモン作用の原因物質とみられた。
 女性ホルモンに似た作用を示すことが報告されているベンゾフェノンは、溶出物にホルモン作用が確認されなかった5種も含め、11種のレジンすべてから溶出。最高は約0.4ppmと比較的高かった

 樽味さんは「女性ホルモン作用のある物質が比較的高い濃度で口の中に溶け出すことは望ましくない。コンポジットレジンの安全性評価に内分泌かく乱作用は考慮されていない。ホルモン作用のない化学物質に切り替え、より安全なレジンを実現することが必要だ」と話している。
日本歯科医師会の見解=>使用に問題はない!!
 過日の新聞報道で、歯科用材料の一つであるコンポジットレジンより環境ホルモン(女性ホルモン様活性を起こす恐れのあるベンゾフェノン、アセトフェノン)が溶出しているとの記事が掲載され、全国各地で患者さん等からの問い合わせが相次いでおります。
 今回の報道に至った大阪大学大学院歯学研究科のグループが行った学会発表の内容は、実験を行った11製品のコンポジットレジンのうち、6製品から女性ホルモン作用があるベンゾフェノンやアセトフェノンが溶出していることが確認されたというものであります。
 新聞報道に接した患者さん等からは、溶出した環境ホルモンが人体に影響するのではないか等、不安にかられての歯科医院等への問い合わせであったと思われますが、同研究グループがその後発表した「12/15付けの新聞記事に対する見解」においては、実験の結果、6製品のうち最高で0.8μgのベンゾフェノンの溶出が認められているものの、この量は人体にリスクがあると考えられる1億分の1の微量であり、同研究グループでは今後とも現在のコンポジットレジンを歯科治療に使用していくことが合理的であるとしています。
 日本歯科医師会においても、今回の大阪大学大学院歯学研究科のグループの学会発表内容並びに見解について検討を行った結果、コンポジットレジンの使用に問題はないことを確認しております。
 
大阪大学大歯科保存学教室見解=>問題とはならない!!
〔別添資料〕
○12/15付けの新聞記事に対する見解
  大阪大学大学院歯学研究科・口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)


--------------------<別添資料>--------------------
2/15付けの新聞記事に対する見解

 このたび、私どもは,コンポジットレジンの内分泌攪乱作用に関するリスクを評価する第一段階として細胞を用いた実験を行い、その結果を学会で発表した訳ですが、私どもの意図とは異なって、センセーショナルな見出しともに新聞報道がなされたようです。 学会発表の全体像と新聞記事での「言い回し」との間に大きな差異を感じ、発表者としては困惑を覚えております。報道により診療現場での混乱が生じていると聞いておりますので、患者さんからの問い合わせがあった場合に参考にしていただけるよう、以下に私どもの見解を記載致します。
・紫外線吸収剤の人体への影響について
 紫外線吸収剤 (2-Hydroxy-4-methoxy-benzophenone, HMBP) は、コンポジットレジンが黄色く変色することを防ぐため添加されていますが、他の分野では、日焼け止めクリームの有効成分としても使用されています。
 最近、動物(卵巣摘出ラット)におけるHMBPの女性ホルモン様活性発現量が報告されました (Environ Health Perspect, 2001)。この報告では、HMBPの女性ホルモン様活性は弱く、1525 mg/kg/dayという多量の経口投与でようやくその作用が認められたとあります。人間の体重を50 kgとして、ラットに作用が認められた量をあてはめると、リスクが高いと考えられる1日の服用量は75gとなります。我々の実験では、コンポジットレジン試料から最高で0.8μgのHMBPが溶出することが分かりましたが、この溶出量は、人でリスクがあると考えられる量の(1億分の1)となります。
 今回われわれは、細胞を用いた実験によってHMBPの溶出が女性ホルモン様活性の発現につながることを指摘しましたが、上記のようなことから考えると、人体への実際的な影響という点では、HMBPの溶出は大きな問題とはならないことが予測されます。

・リスクとベネフィットについて
“リスク(危険性の確率)がほんのわずかでもあるものは即刻使用を中止すべきだ”といった極端な議論に走りがちですが、本来はリスクとベネフィット(利益)を考慮して材料を選択していく必要があります。虫歯などで穴が空いてしまった歯質は再生しないので、現在の歯科治療では欠損となった部分を人工材料で補填します。コンポジットレジンは、できるだけ歯の健全な部分を削る量を少なくしながら、審美的に良好に欠損部分を補填するのに必要不可欠な材料であり、国民が質の高い歯科治療を受ける上で、非常に重要なものであります。
 我々は、今回、コンポジットレジンに女性ホルモン様活性というリスクがあると報告しましたが、これは内分泌攪乱作用がない、より安全な治療用材料を完成していくための提言です。前述のように、ダイオキシンなどとは違って、HMBPについては人への影響が極めて少ないと考えられますので、コンポジットレジンによる歯科治療が患者さんにもたらすベネフィットを鑑みると、現時点では、現存のコンポジットレジンを歯科治療に使用していくことが合理的と考えます。
 
第4回環境ホルモン学会 発表抄録

第4回環境ホルモン学会 発表抄録(2001年12月15日.つくば国際会議場)
Reporter gene assayによる歯科用コンポジットレジンのエストロゲン様活性に関する検討
樽味 寿1).和田 浩1).今里 聡1).松尾昌季2).恵比須繁之1)
1)大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)2)大阪大学先端科学技術共同研究センター

【目的】 歯科用コンポジットレジン(CR)は、審美性に優れた充填用材料として日常の歯科臨床に広く用いられている。CRには様々なモノマーや添加剤が使用されており、毒性、変異原性などの点から、その生体親和性が評価されてきた。しかし、人体への影響が懸念されている内分泌攪乱作用に関しては、詳細な検索がいまだに行われていない。
 本研究では、市販CRおよびその構成成分のエストロゲン様活性をreporter gene assayにて検討し、CRの活性発現に関与する化学物質を特定した。

【材料】 市販CR11種およびCR構成成分22種(モノマー6種.紫外線吸収剤3種.光重合開始剤3種.重合禁止剤2種.重合促進剤8種)を実験に供した。

【方法】 φ5x1.5mmの硬化CRdisk2.0mLPhenol-red-free D-MEM培地に24時間浸漬させた後、このCR溶出サンプルをassayに供した。また、CR構成成分をそれぞれDimethyl sulfoxideに溶解させた後、培地にて濃度を調整し、assayに供した。ヒト腎臓癌由来細胞株(293T)にluciferase reporter plasmidおよびヒトERα発現plasmidtransfectionした後、培地を各サンプルと交換して24時間培養した。培養終了後、ルミノメーターにて発光量を測定しestradiol-17β(100pM)の発光量に対する相対値(Relative luciferase activity)を算出した。
 また、硬化CRdisk2.0mLの蒸留水に24時間浸漬後、HPLCにて溶出成分の濃度測定を行った。

【結果および考察】 11種のCR溶出サンプルのうち6種にエストロゲン様活性が認められた。また、CRの添加剤である紫外線吸収剤2-Hydroxy-4-methoxy-benzophenone(HMBP)と光重合開始剤2,2-Dimethoxy-2-phenyl-acetophenone(DMPA)が、ともに1μM以上の濃度でエストロゲン様活性を示した。すべてのCR溶出サンプル中にHMBPが検出されたが、活性を示した6種のサンプルのうち4種でHMBPの、他の2種ではDMPAの濃度が1μMを上回っており、これらの成分がCRのエストロゲン様活性発現に関与したものと考えられた。

 HMBPとDMPAに関しては、今後in vivoでの詳細なリスク評価を行うとともに、これらの代替物質を考案していく必要があることが示唆された。

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