はじめに
わが国は高齢化、技術革新、情報化、国際化などに大きく変化を告げつつあり、また産業構造の高付加化、知識集約化とともに、国民の価値感は多様化、個性化していると、昭和62年版の「厚生白書」は、説いている。
最近の歯科に対する、患者の医抜知識はますます変化と多様化、個性化を遂げつつある また歯科医療機関の増大においても、患者が医院を選ぶ時代になってる。
このような現状において、患者の個人欲求、すなわち歯を削合しないで、審美的、安価な修復をみたすもの、これに対応する材料、技術の開発が待たれていたのですが、今回の発表したポーセレンラミネートベニアとCRインレーはその欲求に満足できる材料のーつと思われる。今回、その臨床対応について発表した。
A.ポーセレンラミネートベニア
ラミネートベニア法は前歯唇面を審美的埋由から被覆するというアイデアから始まった。ハリウッドの映画スターの前歯の美観を改善するためにレジン製ベニアフェーシングを作り、歯面に貼り仕け、撮影終了後に取り外した。
その後、レジン歯内面を削合して作ったフェーシングをコンポジットレジンで歯面に接着させる法、石膏模型上で加熱重合する法、既製のコンポジットレジン製のフェーシング法などが登場したが、いずれも長期の便用に耐えられないと言う欠点があった。
近年、ラミネートベニアにポーセレンを便用して、接着材としてコンポジットレジンとシランカップリング材を利用することによって、審美性と強度、耐久性に優れている方法が開発された。
ラミネートベニアの利点を列挙する。
1.歯質の保存
2.歯髄を損傷しない
3.充填法より審美的である
4.ポーセレン材は歯肉と親和性が高い
5.チェアータイムが短い
6.術式が簡単で製作コストが低い
<ラミネートベニア法の適応性>
l.歯牙の変色の改善(変色充填物が広範囲である。歯頸部カリエス、斑状歯、変色歯など)
2.歯牙の形態不全の改善(磨耗歯、破折歯、前歯の歯間離開、捻転歯、矮小歯など)
<ラミネートベニア法の禁忌症>
l.外傷的交合圧の加わる部位
2.切端咬合、位置異常
3.著しい歯冠崩壊
4.エナメル質の充分な支持が得られない
コスモテックポーセレンラミネートベニア修復システムの臨床
〈チエアーサイド1〉
1.検査、診断 スタディ模型などを利用して咬合関係などを審査し、修復歯のう蝕、充旗状態のチェック
2.形成までの事前処置
3.修復歯の形成 形成は規則としてエナメル質範囲内で、 0.5〜0.8mm前後の形成量とする。切端部の形成は通常切端の高さを落とさないこと。
4.歯肉圧排
5.印象採得
6.暫間修復 エナメル質に点状に一部エッチン グをして、光重合CRにて形態を改復する。
〈ラボサイド〉
1.作業模型作成
2.名個トレー製作 マージン部のトリミング
3.耐火模型製作 専用のコスモテックベストを使用しそれぞれの歯牙ごとを分割する用にトリミングする。
4.耐火模型空焼き 不純物を焼却するために、1,000℃まで大気圧5分係留後、室温で放冷
5.ポーセレン築盛、焼盛
6.形態修正、グレージング
7.耐火材の除去、修正
8.ポーセレンエッチング フノ酸ジェルにて約1分間処埋後、水洗、超遺音渡洗浄する。
〈チェアサイド2〉
1.試適とコンポジットシェ一ド選択 完成したベニアクラウンにコンポジットシェード (3種)を選び色調を確認する。また微妙な色調はモデファイヤー(5種)を使用する。
2.シランカップリング処理
3.修復歯のエッチング
4.コンポジット塗布、光重合
5.仕上げ研磨
ま と め
ポーセレンラミートベニアの応用について簡単に図示する。
実際の臨床について感じたことは、変色歯・矮小歯、離開歯などに数例応用した所、形成が楽で患者の若痛が少なくて、チェアータイムが短かい点などが利点となる。今回の症例は昭和62年12月より約1年経週している。これからl〜2年様子を観て、症例が多くなることによって、広く応用される事を望む。
写真1 写真2
B.CRインレー
コンポジットが修復材料として便用され、さらに臼歯部に応用されてから10年以上経遇している。
近年は光重合型が多数応用されている。前歯部ばかりでなく臼歯部も含めた歯列全体の審美修復がますます求められている。
ところが臼歯部レジン修復では、隣接面とのコンタクトの回復の困難さ、チェアータイムが長くなること、マージンの適合が隣接面を含む窩洞では特に困難であった。今回のCRインレーは直接レジン充項とメタルインレーの中間領域をカバーする間接充填としての応用意義がある。
旭歯学会は“P−30”レジンインレーシステムとクリアフィルCRインレーについて2種の応用例の発表を行なったが、 “P−30”レジンインレー(以下CRインレー)について述べる。
くCRインレーの利点〉
l.正確な修復が可能
2.チェアタイムの短縮
3.技工操作簡略化
4.高度な審美修復が可能
5.優れた合着システム
〈適 応 症〉
1.全属色でない自然な歯冠色による修復を望む患者。特に小臼歯近心面など。
2.直接充填では修復が困難な遠心部を含む大臼歯等の修復
3.急ぎの治療患者
4.全属アレルギーの患者
く非適応症〉
1.大臼歯の機能咬頭を含む大型の修復
2.歯ぎしりの習慣間のある患者
“P-30”レジンインレーシステムの臨床
〈チェアーサイド1〉
1.診療方針の決定
2.窩洞形態 アンダーカットを作らないこと、インレーの幅1.5mm以上になること、ベベルはつけずにテーパー角度3〜5℃程度もたせること。
3.歯髄保護
4.印象採得・咬合採得
5.シェ一ド選択 Pー30は4色のシェードがあ る。
6.仮封処置 ユージノール系以外のものを応用
〈ラボサイド〉
1.作業模型作 通法通り。
2.分離剤の塗布 専用の分離剤を使用します。
3.レジンの築盛・付形
4.レジン光重合 光照射は各面より30秒
5.コンタクト 咬合調整、固有の特徴を再現するには光重合型テイント(8色)を応用。
6.仕上げ研磨
7.洗浄
〈チエアーサイド2〉
1.試適と咬合調整
2.工ナメル質エッチング エナメル質を15秒エッチングと水洗は20秒。
3.スコッチボンド塗布、光重合 アルコールを揮発させて光照射を10秒。
4. レジンセメントの調合 Pー30K ペースト6mmと光重合型エナメルポンドを1摘加えて希釈してよく練和する。
5.インレー体装着と余剰レジンの除去
6.レジンセメントの光重合 類舌側より各20秒咬合面より1分間照射する。
7.最終調整、研磨
“Pー30”は以上の術式ですが、クリアフイルCRインレーとの異なる所は、専用の熱重合器が必要な事である。その結果、クリアフィルCRインレーの材質が強化される点である。また接着操作はやや簡単である点である。
ま と め
CRインレーの臨床応用については、まず審美性を重点と考え、上下小臼歯で近心隣接面窩洞を含む形成を中心とした。昭和63年末より、応用を始めた。術前に患者に説明してから形成、装着をした所、すべての患者より満足感を示された。
まだ脱落破折はみられていないが、これから数年様子を観ていかなければならない。臨床例数は当所考えていたより少ないことがわかった。
これは小臼歯の近心面U級窩洞に限定したためと思われる。
これから様々、臨床応用を進めて行きたいと考えている。
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